2015.06.04更新

マンションの区分所有者がマンション管理費を滞納したまま当該マンションを他人に譲渡した場合,滞納した管理費を買主に請求することはできるでしょうか。この点,区分所有法は,「前条一項に規定する債権(マンションの管理費等のこと)は,債務者たる区分所有者の特定承継人(買主などのこと)に対しても行うことができる。」と規定し(区分所有法8条),マンションの専有部分が売買で譲渡された場合でも,管理費等の債権については,滞納者である売主から買った買主に対しても請求できる旨を定めています。このように区分所有法8条が滞納者の特定承継人に対しても滞納管理費等の支払いを求めることができるとしたのは,区分所有者団体の構成員の地位がその財産上の持分を含めて区分所有権の移転に伴って移転することの反映であると説明されます。つまり,特定承継人(買主)は,その意思の如何にかかわらず,譲渡人と同一の債務を引き受けるべきものであると法律が定めたのです。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.04更新

マンション管理費を滞納している人がいる場合,そのマンション管理費は消滅時効にかかるのでしょうか。マンションの管理費等の債権については,その性質をどうとらえるかが重要です。この点について,判例(最二小判平成16年4月23日民集58・4・959)は,管理費等の債権は①管理規約の規定に基づいて区分所有者に対して発生するものであり,②その具体的な額は総会の決議によって確定し,月ごとに所定の方法で支払われるものであると判示し,マンションの管理費等の債権は,民法169条の定期給付債権にあたるとしています。定期給付債権とは,基本権である定期金債権から毎期に生じる支分権としての債権であって,その毎期の間隔が1年以内の債権のことです。そのため,マンション管理費等の債権は,5年で消滅時効にかかってしまうことになります(民法169条)。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.04更新

マンションの管理費とは,マンションの敷地及び共用部分等の維持管理のために恒常的に支出される費用をいいます。つまり,区分所有者が負担するマンション管理業務に対応して発生する費用です。マンション標準管理規約25条1項では,日常の維持管理に必要となる費用である「管理費」と計画修繕等で必要となる費用である「修繕積立金」を併せて「管理費等」と呼んでいます。なお,区分所有法は管理費等の範囲については直接は定めていませんが,マンション標準管理規約27条は,管理費等が充当される「通常の管理に要する経費」として,①管理人人件費②公租公課③共用設備の保守維持費及び運転費④備品費,通信費その他の事務費⑤共用部分に係る火災保険料その他の損害保険料⑥経常的な補修費⑦清掃費,消毒費及びごみ処理費⑧委託業務費⑨専門的知識を有する者の活用に要する費用⑩地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用⑪管理組合の運営に要する費用⑫その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用,を挙げています。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.03更新

フリーのライターや宅配便等,会社とは労働契約を結ばずに個人事業主として働いているケースがあります。このような場合,同業者で労働組合を作り,会社と交渉することはできないのでしょうか?この点,住宅設備機器の修理補修等を行う会社と業務委託契約を締結して修理補修を行っていた者が,当該会社との関係で「労働組合法上の労働者」と認定された事例があります(INAXメンテナンス事件/最判平成23.4.12判時2117-139)。
 この事例は,以下のような事例です。会社は主として約590名いるカスタマーエンジニア(CE)をライセンス制度やランキング制度の下で管理し,全国の担当地域に配置を割り振り日常的な修理補修等の業務に対応させていました。そして,各CEの業務日及び休日を指定し,日・祝日についても各CEが交替で業務を担当するよう要請していました。CEの業務委託内容は,会社の定めた覚書で規律され,個別の修理補修の依頼内容をCEの側で変更する余地はありませんでした。CEの報酬は,会社が予め決定した顧客等に対する請求金額に,当該CEにつき会社が決定した級ごとに定められた一定率を乗じ,これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていました。会社から依頼を受けたCEは業務を直ちに遂行するものとされ,原則的な依頼方法である修理依頼データの送信を受けた場合にCEが承諾拒否通知を行う割合は1%弱でした。その他,業務委託契約の存続期間は1年間で会社から異議があれば更新されないとされていたこと,各CEの報酬額は当該CEにつき会社が毎年決定する級によって差が生じ,その担当地域も会社が決定してました。また,CEは,会社指定の担当地域内において,会社の依頼する顧客先で修理補修の業務を行い,原則として業務日の午前8時半から午後7時までは会社から発注連絡を受けることになっていた上,顧客先に赴いて上記の業務を行う際,会社による作業であることを示すため,会社の制服を着用して会社の名刺を携行していました。そして,業務終了時には会社が指定する書式の報告書を会社に送付するものとされていたほか,会社のブランドイメージを損ねないように作業手順や会社への報告方法CEの心構えから接客態度等までが記載されたマニュアルの配布を受け,これに基づく業務の遂行が求められていました。
 このような事例について,判例は,①労務提供者が会社の事業の遂行に不可欠な労働力として,その恒常的な確保のために会社組織に組み入れられていたかどうか②会社が労務提供者との契約内容を一方的に決定していたかどうか③報酬が労務の対価としての性質を有するかどうか,④当事者の認識や契約の運用において,会社の個別の修理補修の依頼に応ずべき関係にあったどうか⑤労務提供者が会社の指定する業務遂行方法に従い,指揮監督の下に労務の提供を行い,かつ,業務について場所的・時間的に一定の拘束を受けているかどうか等の事情(働き方の実態)を重視して,個人事業主であっても「労働組合法上の労働者」と認定したのです。

 

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2015.06.02更新

労働協約の効力は,労働組合に入っていない従業員には適用されないのが原則ですが,4分の3以上の従業員を組織する労働組合が締結した労働協約は,非組合員にも適用されます(労働組合法17条)。

労働協約が非組合員に適用されるかどうかにつき有名な事例があります。ある会社は,会社合併後労働条件が統一されておらず,これが長年の懸案となっていました。定年も63歳と57歳があり,また,退職金規定も二本立てでした。その後,経営悪化を理由に定年を57歳に統一し,退職金の乗率も引き下げる労働協約が締結されたのですが,非組合員がこの労働協約は自分にとって不利益であり適用されないはずだとして争ったのです。以下,労働協約の効力についての理由部分を引用します(朝日火災海上事件‐最判平成8・3・26民集50-4-1008)。(以下引用)‐ 労働協約には、労働組合法一七条により、一の工場事業場の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用されている他の同種労働者に対しても右労働協約の規範的効力が及ぶ旨の一般的拘束力が認められている。ところで、同条の適用に当たっては、右労働協約上の基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益とみられる場合であっても、そのことだけで右の不利益部分についてはその効力を未組織の同種労働者に対して及ぼし得ないものと解するのは相当でない。けだし、同条は、その文言上、同条に基づき労働協約の規範的効力が同種労働者にも及ぶ範囲について何らの限定もしていない上、労働協約の締結に当たっては、その時々の社会的経済的条件を考慮して、総合的に労働条件を定めていくのが通常であるから、その一部をとらえて有利、不利をいうことは適当でないからである。また、右規定の趣旨は、主として一の事業場の四分の三以上の同種労働者に適用される労働協約上の労働条件によって当該事業場の労働条件を統一し、労働組合の団結権の維持強化と当該事業場における公正妥当な労働条件の実現を図ることにあると解されるから、その趣旨からしても、未組織の同種労働者の労働条件が一部有利なものであることの故に、労働協約の規範的効力がこれに及ばないとするのは相当でない。
 しかしながら他面、未組織労働者は、労働組合の意思決定に関与する立場になく、また逆に、労働組合は、未組織労働者の労働条件を改善し、その他の利益を擁護するために活動する立場にないことからすると、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容・労働協約が締結されるに至った経緯、当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、労働協約の規範的効力を当該労働者に及ぼすことはできないと解するのが相当である。‐(ここまで引用)
 このように,判例は,労働協約についての一般的効力を定める労働組合法17条は,その有利不利を問わず非組合員にも労働協約を及ぼす趣旨であるとしたうえで,労働協約を適用することが著しく不合理であるときには当該労働協約を非組合員に及ぼすことはできないとしたのでした。そして,事案の解決としては,非組合員である労働者について57歳が定年とされて退職金も減額されるのは著しく不合理であるとして労働者側の訴えを認めたのです。

 

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2015.06.02更新

労働組合と使用者で労働条件やその他の事項に関して協定が結ばれることがあります。この協定について書面が作成され,労使双方当事者がこれに署名しまたは記名押印すればこの協定は「労働協約」とよばれる地位を獲得し,規範的効力を有するようになります(労働組合法14条)。「労働協約」は,規範としては就業規則にも優越する地位にあり,就業規則は労働協約に反することができません(労働基準法92条)。また,労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効になります(労働組合法16条)。
労働協約の効力は,労働組合に入っていない従業員には適用されないのが原則ですが,4分の3以上の従業員を組織する労働組合が締結した労働協約は,非組合員にも適用される(労働組合法17条)ので注意が必要です。

 

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2015.06.01更新

労働組合に入れば組合費を納めなくてはならないし,労働組合で一定の役職に就けば会議に参加することが必要になります。労働組合には加入しなければならないのでしょうか。労働組合は労働者が自主的に結成し運営されるものであり,労働組合に加入するかどうか,一旦加入した労働組合を脱退するかどうかは,個々の労働者が自由に決めることができるのが原則です。しかし,労働組合と企業が「ユニオンショップ協定」を結んでいるときは別です。「ユニオンショップ協定」とは,労働者は,労働組合という組織に加入することが強制され,使用者は,自己の雇用する労働者のうち労働組合に加入しない者及び労働組合員ではなくなった者を解雇する義務を負う制度(労働協約)です。労働組合は,使用者との団体交渉による有利な労働条件を獲得することを主な目的としており,組織をできるだけ拡大して交渉力を高める必要があるため,このような労働組合と企業の労働協約が普及したのです。日本では,特に従業員数が多くなるにしたがい,ユニオンショップ協定を有している企業の割合が多くなる傾向にあるようです。仮に,勤める企業・労働組合にユニオンショップ協定がないとしても,多くの労働者の加入で交渉力をもつという労働組合の存在意義を踏まえて加入しないかどうかを判断すべきでしょう。

 

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2015.06.01更新

厚生労働省の調査(平成25年6月30日時点)によれば,単一労働組合数は,2万5532組合,労働組合数は987万5千人で,前年に比べて労働組合数は243組合の減(0.9%減),労働組合員数は1万7千人の減(0.2%減)となっており,推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は,17.7%となっているのだそうです。
このように,我が国では,労働組合数,組合員数,推定組織率全ての数値で減少の一途をたどっているのですが,そもそも労働組合とはどういう組織でしょうか。法律上,労働組合とは,「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又は連合団体」とされています(労働組合法2条)。労働者と企業の間には,情報力,交渉力,経済力その他の力すべてで圧倒的な力の差があります。そのため,一人ひとりの労働者が企業と対等に交渉することは不可能です。そこで,日本国憲法は,勤労者の団結権及び団体交渉,団体行動権を保障して(憲法28条),労働者が労働組合をとおして労働条件の維持向上を図れるようにしたのです。このように,賃金等の労働条件の向上などに対して労働組合が果たすべき役割は大きいのですが,労働組合組織率が低下しているため,いままであれば労働組合に相談していたようなことが相談できなくなっているという実情があるのです。

 

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