2015.06.03更新

フリーのライターや宅配便等,会社とは労働契約を結ばずに個人事業主として働いているケースがあります。このような場合,同業者で労働組合を作り,会社と交渉することはできないのでしょうか?この点,住宅設備機器の修理補修等を行う会社と業務委託契約を締結して修理補修を行っていた者が,当該会社との関係で「労働組合法上の労働者」と認定された事例があります(INAXメンテナンス事件/最判平成23.4.12判時2117-139)。
 この事例は,以下のような事例です。会社は主として約590名いるカスタマーエンジニア(CE)をライセンス制度やランキング制度の下で管理し,全国の担当地域に配置を割り振り日常的な修理補修等の業務に対応させていました。そして,各CEの業務日及び休日を指定し,日・祝日についても各CEが交替で業務を担当するよう要請していました。CEの業務委託内容は,会社の定めた覚書で規律され,個別の修理補修の依頼内容をCEの側で変更する余地はありませんでした。CEの報酬は,会社が予め決定した顧客等に対する請求金額に,当該CEにつき会社が決定した級ごとに定められた一定率を乗じ,これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていました。会社から依頼を受けたCEは業務を直ちに遂行するものとされ,原則的な依頼方法である修理依頼データの送信を受けた場合にCEが承諾拒否通知を行う割合は1%弱でした。その他,業務委託契約の存続期間は1年間で会社から異議があれば更新されないとされていたこと,各CEの報酬額は当該CEにつき会社が毎年決定する級によって差が生じ,その担当地域も会社が決定してました。また,CEは,会社指定の担当地域内において,会社の依頼する顧客先で修理補修の業務を行い,原則として業務日の午前8時半から午後7時までは会社から発注連絡を受けることになっていた上,顧客先に赴いて上記の業務を行う際,会社による作業であることを示すため,会社の制服を着用して会社の名刺を携行していました。そして,業務終了時には会社が指定する書式の報告書を会社に送付するものとされていたほか,会社のブランドイメージを損ねないように作業手順や会社への報告方法CEの心構えから接客態度等までが記載されたマニュアルの配布を受け,これに基づく業務の遂行が求められていました。
 このような事例について,判例は,①労務提供者が会社の事業の遂行に不可欠な労働力として,その恒常的な確保のために会社組織に組み入れられていたかどうか②会社が労務提供者との契約内容を一方的に決定していたかどうか③報酬が労務の対価としての性質を有するかどうか,④当事者の認識や契約の運用において,会社の個別の修理補修の依頼に応ずべき関係にあったどうか⑤労務提供者が会社の指定する業務遂行方法に従い,指揮監督の下に労務の提供を行い,かつ,業務について場所的・時間的に一定の拘束を受けているかどうか等の事情(働き方の実態)を重視して,個人事業主であっても「労働組合法上の労働者」と認定したのです。

 

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投稿者: 今村法律事務所

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