Q&A

相続・遺言
Q

父が死亡しました。母と私が相続人ですが,生前,父は負債しかなく父を相続したくはありません。どうすればよいですか?

A

相続の放棄をする必要があります。相続の放棄をしようとするときは,その旨を家庭裁判所に申述する必要がありますが,家庭裁判所が相続の放棄を受理・審判することによりはじめて効力が生じるので注意が必要です。

Q

相続の放棄はいつまでもできるのですか?

A

「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に」する必要があります。これは,相続人が相続開始の原因たる事実(死亡などの事実)の発生を知り,かつそのために自己が相続人となったことを知った時です。

Q

父が亡くなり私が相続人になったのですが,父は生前多額の債務があることを私に隠していました。死後,1年経過してから相続人の私に請求が来ました。相続の放棄が出来ませんか?

A

相続放棄の熟慮期間の始期である「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続人が相続開始の原因たる事実(死亡などの事実)の発生を知り,かつそのために自己が相続人となったことを知った時であって,相続すべき債務があることを知った時ではありません。ですので,死後1年経過後には相続放棄できない場合が多いと思われます。

労務管理
Q

「マタハラ」ってなんですか?

A

マタハラとは,マタニティ・ハラスメントの略ですが,比較的新しい言葉で法律上の定義があるわけではありません。ただ,一般的な定義では「働く女性が妊娠・出産等を理由として職場で受ける肉体的精神的嫌がらせ」といえるでしょう。また,マタニティという言葉からは少し離れますが,育児休業からの復帰後の就労状況や育児短時間勤務に関する問題など,育児を理由とする嫌がらせも含めて考えられています。

Q

企業の「マタハラ」対策は必要ですか?

A

妊娠・出産を理由とする不利益取扱いは男女雇用機会均等法9条3項で禁止されています。また,育児を理由とする不利益取り扱いの禁止はいわゆる「育児介護休業法」10条により禁止されています。そのため,事業主がマタハラを防止するための労務管理上の措置を講ずることは事業主の法律上の義務であるといえるでしょう。

Q

妊産婦さんに時間外労働をさせていいのでしょうか?

A

妊産婦さんについては,①妊産婦から請求があった場合,協定や非常事由があったとしても時間外労働をさせてはならない,②妊産婦が請求した場合には深夜業をさせてはならない等の特別の規制(労基法60条)があります。

Q

ここでいう「妊産婦」とはどういった方を指すのでしょうか?

A

妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性のことをいいます(労基法64条の3)。

Q

幼稚園児の娘さんを育てながらご主人と共稼ぎをしている女性の従業員がいます。その従業員には毎日3時間の残業をお願いしています。その従業員は残業後に家に帰って家事をしているようです。

A

小学校入学前の子育て労働者については,育児介護休業法で,短時間勤務,ノー残業制度などの支援制度が定められています(3歳までは法的義務,3歳以上は努力義務)。また,労働契約法3条3項は,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を会社に求めています。従業員の就労状況を見直すべき時期です。

Q

17歳の高校生をアルバイト採用しようと思います。雇用に際して,注意すべき点はありますか?

A

18歳に満たない年少者については,使用者は,①18歳に満たない年少者を午後10時から午前5時までの深夜時間帯において使用してはならず(労基法61条),②(協定があったとしても)18歳に満たない年少者を時間外労働・休日労働をさせてはならない(労基法60条)という未成年者の心身に配慮した特別な規制があります。

労働
Q

どういった場合に残業代の請求ができるのですか?

A

就業規則や個別の労働契約等で定められている労働時間(これを「所定労働時間」といいます)を超過して勤務した場合には,基本的に残業代の請求が可能です。たとえば,午前10時から午後6時まで(休憩1時間)の7時間労働と決められていた場合,午後7時まで勤務したとすれば,1時間分の賃金が請求できることになります。

Q

残業代として請求できる金額はどのように決まるのですか?

A

たとえば,定められた勤務時間を超過して勤務していたとしても「1日8時間,週40時間」などの労働基準法の定める枠の範囲内に収まっている場合は,請求できるのは基礎賃金(時間単価)のみです。

Q

基礎賃金(時間単位)を超過する金額を請求できる場合があるのですか?

A

労働基準法は,労働者の心身の健康等に配慮して使用者が労働者に働かせることが出来る時間の上限を定め(「1日8時間,週40時間」など。),これを超過して働かせた場合には割増賃金を支払わなくてはならない旨を定めています。

 

Q

割増率はどのように決まってますか?

A

以下の場合には,基礎賃金(時間単価)を100パーセントとすると,基礎賃金(時間単価)に以下の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません。
 A 時間外労働(1日8時間もしくは1週40時間を超えた場合) 125パーセント
 B 休日労働(1週に1回の休日もなく労働した場合) 135パーセント
 C 深夜労働(午後10時から午前5時まで労働した場合) 125パーセント
 そのほかにも,時間外労働が深夜に及んだ場合や休日労働が深夜に及んだ場合等により割増率が変わります。

Q

会社を数年後に定年退職するので,定年退職後に会社に対して残業代を請求しようと考えています。残業代の請求は,いつまでもできるのですか?

A

退職手当を除く賃金の請求権は2年間行使しないと時効によって消滅します(労働基準法115条)。残業代も「賃金」に当たると考えられますので,該当月の給与支給日から2年経過してしまうと請求できなくなります。

Q

現在勤める会社から県外への転勤を命じられたため,地元の会社を探して地元の会社から採用内定をもらいました。ところが,現在勤める会社を辞職したあとになって内定取消を言われました。

A

採用内定は,始期付解約権留保付労働契約成立とされており,内定取消は留保解約権の行使に基づくものです。ただし,使用者の解約権の行使には合理的と認められる理由が必要であると解されています。

Q

内定取消先に何らかの補償を求めることは出来ますか?

A

採用内定により,始期付解約権留保付とはいえ労働契約が成立していると考えられています。ですから,使用者の恣意的で不合理な内定取消については,損害賠償請求が可能です。

事業承継
Q

従業員10名程度の食品製造会社の経営者です。私も高齢になったので,若い人に事業を引継ぎたいと考えています。どのような方法がありますか?

A

①生前実現型②生前進備型③遺産分割という方法の三つがあります(「自由と正義」2008年8月号23頁以下参照)

Q

生前に実現する方法とは,どういった方法ですか?

A

生前に実現する方法は,経営者が生前に事業用資産を売買や贈与の方法で後継者に譲ってしまう方法です。

Q

生前に売買や贈与の方法で後継者に譲ってしまう方法に問題点はないのですか?

A

売買の方法の場合,事業資産をどう評価するか,買主となる後継者が買取資金をどのようにして調達するのかが問題となります。贈与の場合は,贈与税という非常に税率の高い税金をどう処理するかの問題があります。

Q

生前に準備する方法とは,どのような方法ですか?

A

生前に準備する方法とは,生前に承継の準備だけをしておいて,死後に事業承継を実現する方法です。大きく分けて二つの方法があり,遺言の方法と死因贈与の方法です。

今村法律事務所 096-288-6686

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