2015.06.30更新

交通事故で鞭打ちになり日常生活に支障をきたすようになったが、後遺障害診断書を提出して認定申請した場合に「非該当」とされた場合はどうしたらよいでしょうか。いわゆる「むち打ち症」のような頸部の損傷に伴って生ずる痛み、しびれ、知覚障害、めまいなど種々の症状が出ます。骨折などのようにレントゲンなどから外部から見ても明らかに体の部位を損傷している場合と違い、外部から見て悪いところが分からないことが多く、その等級評価で争いになることが多い症状です。自賠責保険の後遺障害等級でいえば、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」か14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に当たればよいのですが、この程度に達しない後遺障害等級非該当と評価されることもあります。ところで、自賠責保険の後遺障害等級12級13号にいう「局部に頑固な神経症状を残すもの」とか14級9号にいう「局部に神経症状を残すもの」とかは、抽象的ですから実務的には労災補償の認定基準を参考にして判断されます。なお、労災保険の認定基準は「労災補償障害認定必携」という本が公刊されており、誰でも入手可能です。ここで12級13号や14級9号に該当しそうな障害の類型としては「頭痛」「失調めまい及び平衡機能障害」「疼痛等感覚障害」「特殊な正常の疼痛」などが考えられますが、これらの類型で評価されることはあまりないようです。自賠責保険実務では、12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」言い換えれば「神経系統の障害が存在することが他覚的に証明できるもの」がこれに当たるとされています。また14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」が該当するという判断基準に基づいて運用されています。また、労災補償の認定基準では、回復困難であることと労働能力の喪失を伴うことも後遺障害と認定するための大前提としていますので、自賠責保険実務もかかる観点から基準が絞られてくるのです。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.29更新

国家公務員の一般職は、人事院が2008年に懲戒方針を改定し、飲酒運転を厳罰化しました。従前は、事故を伴わない酒気帯び運転はもっとも厳しい処分が「停職」でしたが、「免職」に引き上げられました。酒酔い運転も従前は「免職か停職、減給」でしたが、「免職か停職」と厳しくなりました。このような厳罰化の流れは、地方自治体にも広がっています。ところで、6月25日付毎日新聞によれば、陸海空3自衛隊員の飲酒運転に対する懲戒処分基準が、一般職の国家公務員と比べて軽いことが分かったそうです。一般職の飲酒運転への懲戒基準は、福岡市職員が2006年に起こした3児死亡事故を機に厳罰化されました。事故を伴わなくても免職とされる一方、自衛隊職員は、1978年の基準策定以来「15日以下の停職」にとどまります。防衛省人事局は「あくまでも基準であってすべてが15日以下の停職になるわけではない。ただし、基準を厳罰化することは考えていない。」としているそうですが、社会的に飲酒運転が厳しく非難される中、自衛隊だけが合理的な理由の説明なしにこの基準を維持することができるのか、注目されます。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.27更新

飲酒運転には、道路交通法上、酒酔い運転と酒気帯び運転があります。酒酔い運転とは、アルコール濃度の検知値には関係なく「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」である場合がこれに該当します。具体的には、直線の上を歩かせてふらつくかどうか、視覚が働いているか、運動機能・感覚機能が麻酔されていないか、言動などから判断・認知能力の低下がないかなどの点が総合的に判断されます。なお、軽車両(自転車を含む)の運転についても違法であり刑事罰の対象となります。
酒気帯び運転とは、血中アルコール濃度又はそれに相当するとされる呼気中アルコール濃度が、一定量に達しているかという形式的な基準で判断されます。このような判断基準の違いがあるので、運転者の体質によっては、酒気帯びに満たないアルコール量でも酒酔い運転に該当するということは十分に考えられます。罰則は、酒酔い運転が5年以下の懲役又は100万円以下の罰金で、酒気帯び運転が3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。また、違反点数は、酒酔い運転35点、酒気帯び運転は、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上であれば25点、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg未満0.15mg以上であれば13点です。
なお、車両提供者は運転者と同じ刑罰を科されます。つまり、運転者が酒酔い運転をした場合は、車両提供者は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に、運転者が酒気帯び運転をした場合は、車両提供者は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。また、酒類の提供者・車両の同乗者も処罰されます。運転者が酒酔い運転をした場合、酒類の提供者・車両の同乗者は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科され、運転者が酒気帯び運転をした場合、酒類の提供者・車両の同乗者は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。なお、道路交通法上の刑罰とは別に、公務員や会社に勤める人には懲戒処分という制裁があります。このように、現在、飲酒運転をしてしまうと飲酒運転に荷担した人たちも含めて非常に大きな代償を支払わなければなりません。

 

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.25更新

公証人が作成する公正証書遺言が遺言をした本人の認知症などを理由として無効になることってあるのでしょうか。民法は、遺言者の能力について「15歳に達した者は、遺言をすることができる」と規定し(民法960条)、15歳に達した者はだれでも、どんな状態でも、遺言をすることができるようにも思えます。しかし、遺言をすることによって財産権の移転等重大な結果をもたらしますので、やはり相応の能力が必要と解されています。そして、その能力としては、遺言の内容及び当該遺言に基づく法的結果を弁識・判断するに足りる能力であるとされています。ただ、通常、公正証書遺言の内容は比較的単純なものであるから、その作成には契約などの際に必要な高度の能力までは要しない考えられています。前にも触れましたが、日本公証人連合会は、判断能力を確認する公証人研修などを増やして対応しているといいますが、公証人は医者ではないので、その人が認知症に罹っているかどうか、仮に罹っていることが判明したとしても遺言能力を有しているかどうかについて必ずしも判別できるとは限りません。そこで、後日、公正証書遺言が無効であるとして多数の裁判が提起されることになるのです。そして、遺言無効確認裁判提起時においては、遺言をした本人は他界していますので、作成時において遺言者が不可解な言動をしていなかったか、他人とスムーズに意思疎通していたかなどを少ない資料から推測し、遺言能力があったかどうかを判断することになるのです。

 

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2015.06.24更新

遺言公正証書の年間作成件数が2014年に初めて10万件を突破したのは、税制改正で、相続税が非課税になる基礎控除額が従来の6割に引き下げられたことも一つの要因となっているかもしれません。すなわち、いままで相続税に無関係だった層も課税対象となるため、トラブル防止のために遺言公正証書のニーズが高齢者の間で高まっているのかもしれません。一方、遺言を残した人の判断能力が認知症などで疑われる場合、死後に遺言の有効性を巡って親族間で訴訟に発展する例もあります。このため、日本公証人連合会は、判断能力を確認する公証人研修などを増やして対応しているといいます。なお、公証人は、裁判官や検察官などを長年務めた人の中から法務大臣により任命されます。全国約300カ所の公証人役場に約500人の公証人が勤務しています。
他方、公正証書の保管も重大な課題となっています。東日本大震災では宮城県石巻市の公証人役場が津波の被害に遭って保管書類が流されそうになったことから、全国の公証人役場は平成26年4月から、遺言公正証書のデジタル保存を始めたそうです。災害に備えて原本をスキャナーで読み取り,デジタル化した遺言公正証書データを山間部にあるサーバーで保存しているとのことです。

 

 

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2015.06.24更新

遺言公正証書の年間作成件数が2014年に初めて10万件を突破したとのニュースがありました。日本公証人連合会の調べによると、遺言公正証書は1971年には1万5000件、1980年は約3万件、2000年は約6万件であり、この間明らかに遺言公正証書は増え続けています。これは、高齢化が急速に進んでいることに加え,核家族化や事実婚に代表されるように家族の形態が多様化したため、法律の規定とは異なる相続を望む人が増えているということも背景にあるのではないでしょうか。社会には、たとえば、「夫婦には子供がいないが、仲の悪い兄弟には財産を渡したくない。」とか「近くに住んで面倒をよく見てくれた次女に他の兄弟姉妹よりも多くの財産を相続をさせたい。」とか「内縁の妻に財産を残したい。」とか様々なニーズがあるので、遺言公正証書がこのようなニーズに応えているようです。なお、今後も遺言公正証書のニーズは増え続けると予想しており、日本公証人連合会では、遺言を確実に保管するために証書のデジタルデータ化にも取り組んでいくそうです。なお、気になる遺言公正証書の作成手数料ですが、これは遺産額で決まり1000万~3000万円の場合は相続人1人あたり2万3000円だそうです。

 

 

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2015.06.23更新

保険約款には、示談代行とは別に保険会社の協力援助義務が定められていることがあります。モデル約款にも「被保険者が対人事故または対物事故に関わる損害賠償を受けた場合には、当会社は、被保険者の負担する法律上の損害賠償責任を確定するため、当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、被保険者の行う折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続きについて協力または援助を行います。」と規定されています。
保険会社は、かかる協力援助義務にしたがって①事故受付時における当面の措置についての助言、指導を行ったり、②示談書の書き方や保険金請求書類の作成取付けについての指導、援助を行ったり、③被保険者の行う示談交渉についての相談・助言を行ったり、④必要に応じて被害者との折衝または調停への立ち会いを行ったり、⑤調停または訴訟の手続きに関する指導助言を行ったりします。
このように保険会社の協力援助義務は、あくまでも解決のための助言をいうのであり、保険会社が直接示談交渉を行うことはありません。

 

 

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2015.06.22更新

保険会社の示談代行制度はいいことばかりかというと必ずしもそうとは限りません。まず、被害者側の立場に立った場合、交通事故を起こした加害者本人ではなく、保険会社が交渉に乗り出してくるので、被害者にとっては加害者不在のままで解決を図ろうとしているととられて被害感情が高まるというケースもよくあります。「加害者の謝罪の言葉が一言でも欲しいのにお金で解決しようとしている。」と思われるのです。また、保険会社が迅速な賠償を追求するあまり、いわゆるビジネス的な処理に終始してしまい、被害者の被害者感情が置き去りにされることがあってはなりません。このように、交通事故の被害者は、交通事故という不慮の事故によって平穏な日常生活に重大な支障を来された生身の人間です。ですから、交通事故問題の解決の本質は被害者の被害感情を慰撫することにあり(もっとも、時間を事故前の状態に巻き戻すことはできないので、これはとても困難な問題です。)、賠償額の提示はその手段に過ぎないということを常に忘れないようにしなければなりません。

 

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2015.06.22更新

保険会社の示談代行制度があることにより、交通事故当事者間の示談交渉に介入して不当な利益を取得しようとするいわゆる「示談屋(事件屋)」が排除されるようになりました。それだけでなく、保険会社の示談代行制度があることにより、日常的に発生する交通事故の被害者の迅速な救済が図られるようになりました。さらに、交通事故の加害者と被害者という紛争当事者以外の第三者である保険会社が示談折衝することにより感情的にならず冷静な折衝が可能となりました。
ところで、現在の民事交通賠償の解決は、自動車保険による資力担保抜きにして語ることができません。特に自賠責保険による全国水準の均質的保障に基礎を置き、任意保険がその上乗せ保険としての機能を果たしている現代の自動車保険システムにおいては、「資力のある任意保険会社自らが行う示談解決」という看板があることで、決まった賠償額を一括で確実に履行してもらえるという多大な安心感を被害者側に持ってもらうことができます。これらの点も保険会社の示談代行制度のメリットといえるでしょう。

 

 

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2015.06.20更新

任意保険には、交通事故時に保険会社に示談代行してもらえる制度がついています。これは、被害者やその相続人から損害賠償請求を受けた被保険者らの加害者に代わって加入保険会社自らが解決する制度です。解決の手法としては、被害者との交渉や示談、調停や訴訟のための手続(弁護士の選任も含む)を行うことまで含みます。ただ、保険会社は、被保険者(加害者)に対して支払責任を負う限度において示談代行をしますので,被保険者(加害者)に対して支払責任を負わない場合には示談代行しません。すなわち、①被保険者に責任のない場合(無責事故)②保険約款の免責事由に該当し、保険会社に保険金支払い義務がない場合(免責事故)③被保険者の負担する賠償額が自賠責保険等の支払額の範囲内の場合(自賠内事故)については、保険会社に支払責任がないので示談代行しません。なお、任意保険によってはそもそも示談代行付きでないものもありますので、任意保険加入時には確認することが必要です。

 

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