2016.03.15更新

企業がある従業員の業務上の軽度のミスなどについて、罰金と称して給与から天引きすることはできるでしょうか。労働基準法は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とし、賃金全額支払いの原則(労基法24条1項)を定めています。軽度の業務上のミスなどを理由とし罰金と称して給与から天引きすることはこの原則に違反します。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.18更新

株式会社の取締役会が取締役会の決議を経ずに「多額の借財」をした場合,当該取引(借財)はどのようになるのでしょうか。これについて判例は,以下のように判断しています。―以下引用―【株式会社の一定業務執行に関する内部的意思決定をする権限が取締役会に属する場合には、代表取締役は、取締役会の決議に従つて、株式会社を代表して右業務執行に関する法律行為をすることを要する。しかし、代表取締役は、株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する点にかんがみれば、代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、内部的意思決定を欠くに止まるから、原則として有効であつて、ただ、相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限つて、無効である、と解するのが相当である。(最三昭和40.9.22民集19巻6号1656頁)】
このように,(多額の借財に取締役会の決議が必要な会社において,)株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ずに,多額の借財をした場合には,原則として当該借入自体は有効ですが,取引の相手方(貸付する方)が決議を経ていないことを知り,又は知りえた場合であれば当該借入自体は無効になるというのが判例の考え方です。このような判例の考え方に立てば,融資先から議事録等の資料の交付を受けることで,この悪意・過失がないことの裏付けとなるということになるでしょう。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.17更新

株式会社においては,「多額の借財」は取締役会の権限とされており,「代表取締役に委任することができない」とされています(会社法362条4項2号)。つまり,代表取締役が取締役会にかけずに多額の借財をすることを決定しても無権限で行ったことになります。もっとも,会社法においては,株式会社の機関を自由に設計できます。そこで,株式会社といっても,そもそも取締役会が設置がされていない株式会社もあります。まず,委員会設置会社では,取締役会は「多額の借財」について執行役への委任することが可能です(会社法416条4項)。また,取締役設置会社においても,特別取締役による決議が許容されています(会社法373条)。
以上のとおり,現行会社法のもとでは様々の形態の機関をもった株式会社が存在するため,株式会社に多額の貸し付けをする側(金融機関)も貸付先の株式会社の機関がどのようになっているかを商業登記や会社定款によって確認する必要があります。そして,会社の機関がどのようになっているのか等に応じて無権限での借入でないことを裏付ける資料の提出(取締役会議事録,特別取締役会議事録等)を求めることになります。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.05.29更新

顧客自身からその顧客の個人情報に関する開示を求められ場合,どうすればよいでしょうか? 取扱事業者は,個人情報保護法に基づく開示義務があるので当然に開示する必要があります。すなわち,個人情報取扱事業者は,本人(個人情報によって識別される特定の個人のこと)から当該本人が識別される保有個人データの開示を求められたときは,本人に対し,政令で定める方法により,遅滞なく,当該保有個人データを開示しなければならないとされています(法25条1項)。もっとも,本人や第三者の権利利益を害するおそれがある場合や業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合等には,その全部又は一部を不開示とすることができます。また,開示された情報を見た本人が当該個人データの内容が事実ではないという理由によってデータの訂正,追加,削除を求めた場合,遅滞なく必要な調査を行い,その結果に基づき,当該個人データの訂正,追加,削除をしてその旨を本人に通知しなければならず,訂正を行わない旨を決定したときには本人にその旨を通知しなければなりません(法26条)。

 

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2015.05.29更新

顧客から「おたくでは個人情報の管理はどうしているのか。」との質問された場合,どのように回答すればよいのでしょうか?個人情報の保護に関する法律(「個人情報保護法」)は,高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ,個人の人格尊重を基本理念として,個人情報の適正な取扱いに関し,個人情報を取り扱う事業者の義務などを定めています(法1条)。 ここで「個人情報」とは,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述により特定の個人を識別することができるものをいいます(法2条1項)。そして,個人情報データベース等を事業の用に供している者を「個人情報取扱業者」と定め,個人情報取扱業者は,あらかじめ本人の同意を得ないで,特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて,個人情報を扱ってはならず(利用目的による制限・法16条),また,本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供することを制限しています(第三者提供の制限・法23条)。
特に,医療機関や金融機関は,多数の個人情報を取得することになり,また,そこで取得した個人情報は,医療機関や金融機関としての事業活動を行う上で不可欠というだけでなく,その取り扱い方いかんは企業の信用にもかかわる問題です。そのため,個人情報については,コンプライアンスという観点だけでなく,企業の信用にも深く関わる問題であるという問題意識をもって取り扱う必要があるのです。企業によっては個人情報保護の基本方針(プライバシーポリシー)を定めて内部的な管理体制を構築し,個人情報保護法等で定められている利用目的や利用範囲について広く開示しているところです。

 

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2015.05.29更新

物上代位による担保権の実行は,担保権の存在を証する書面が提出されたときに限り開始されます(民事執行法193条1項)。立証すべき事実は,①担保権の存在だけでなく,②被担保債権の存在,③弁済期の到来,④債権者から債務者に対して売却された動産が第3債務者に転売された事実です。特に,差押命令においては,債務者及び第3債務者の審尋(事情を聴くこと)はできないので(民事執行法145条),立証のためには書面が重要になります。ただし,一通の文書によらず複数の文書によることも許されます。例えば,売買契約書,発注書,納品書,納品伝票,受領書,請求書,出荷依頼書等を複数提出することが考えられます。ただし,これらによって,債務者に対する担保権の存在が高度の蓋然性をもって証明される文書であることが必要であるとするのが判例の考え方です。

 

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2015.05.28更新

動産売買先取特権の実行方法としては,売買目的物が債務者(買主)の手元にある場合(転売等をしていない場合),①債権者が執行官に対して当該動産を提出する(190条1項1号)か,または,②債権者が執行官に対して動産の占有者が差押えを承諾する書面を提出する(190条1項2号)ことが必要であり,いずれの場合でも債務者(買主)の協力が必要になります。
他方,売買目的物が転売されて引き渡された場合,先取特権者は,既に引渡されてしまった当該動産について先取特権を行使することはできません(民法333条)。しかし,この場合でもあきらめるのはまだ早く,債務者(買主)がまだ転売代金を回収していない場合は,物上代位という方法によって転売代金債権を差押えて回収するという方法があります。この物上代位は,担保権は目的動産の価値の変形物である転売代金債権の上にも及んでいるという考え方に基づいています。しかし,先取特権者は,債務者が転売代金等の支払いを受ける前に差押えをしなければなりません(民法304条1項但書)。

 

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2015.05.28更新

取引先に対して掛売りで継続的に商品を売却してきたところ,突然取引先店舗が閉鎖され,取引先の代理人弁護士から破産する旨の受任通知が届いたような場合,どうすればよいのでしょうか。特に,商品の一部が取引先の倉庫に残っている時などは商品を押さえることはできないでしょうか。ここで,回収方法として,①動産売買先取特権に基づき在庫商品を競売して回収する②取引先が転売したときの転売代金債権を差押えて回収する方法があります。
まず,先取特権とは,債務者の財産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利です。そして,かかる先取特権は,法律上の要件を満たせば当然に発生する法定の担保物権です(民法303条)。ところで,動産の売買を原因として生じた債権を有する者は,債務者の特定の財産について先取特権を有します(民法311条5号)。動産売買先取特権の実行方法は,民事執行法が定める動産競売という方法により行います(民事執行法190条)。うまく実行できれば,売買目的物を換価し,その換価代金から先取特権者として優先弁済を受けることができるのです。

 

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2015.05.27更新

取引基本契約書において,どのような規定を盛り込めば売掛金の回収を確実にすることができるでしょうか。まず,買主側に経済的余裕がある場合,取引開始にあたり,一定金額を保証金として差し入れてもらい,売掛金の回収ができないような場合は保証金から回収するという条項を盛り込むことは一考の余地があります。このような考え方の延長線上で,売掛金額が一定の限度額を超える場合には,保証金を差し入れない限り取引を継続しないとの規定を入れることも有効かもしれません。
そもそも,買主の破綻による売掛金の回収困難に陥らないための基本的対処法は,支払いサイトの短期化,すなわち,売掛金の支払時期をなるべく早い時期にしておくことです。こうして支払期間を短くしておくことで,売掛金が多額になることを防止することができるのです。
さらに,滞納などの信用悪化を示す事実が発生した場合,現金取引に切り替えるとの条項を入れておくことも有効であると考えられます。
なお,取引基本契約で定めた措置による回収が困難な場合,売掛金の回収を保全する策として,動産売買先取特権を利用したり,債務者の資産に対する仮差押などが考えられます。

 

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2015.05.26更新

中小企業間の継続的な売買契約の場合,「水くさい」などと言ってわざわざ契約書等の書面を交わさず,口頭の約束だけで取引が行われている例がいまだに多いようです。しかし,このような口頭の約束だけでの取引では,トラブルが生じたときに契約の内容が不明確であるためにかえってトラブルが長引き,迅速かつ円満な解決が困難となる原因となるのです。このようなトラブルを回避するためにも継続的な売買契約についての取引基本契約書を作成し,当事者間の契約内容を明確にしておくことが大切です。そして,売掛金についていえば,売掛金の滞納回数や滞納金額などを定めて契約の解消事由としておき,あまりにも売掛金を滞納することがあれば契約を解消するとの規定等を入れることが経営判断として合理的ということもあるでしょう。また,書面で交わしておくことは,契約内容を巡って法的手続きを利用する際に,契約内容を容易に証明するというメリットにもなるのです。

 

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