2015.08.03更新

平成25年9月4日、最高裁判所は、非嫡出子(いわゆる婚外子)の法定相続分を嫡出子の2分の1とした民法900条の規定を違憲と判断しました(平24(ク)984号 ・ 平24(ク)985号)。それまでの判例では、婚外子の法定相続分を嫡出子の2分の1とした民法900条の規定は法律婚の尊重と非嫡出子の保護との調整を図ったものとして合憲とされていました(最大決平成7年7月5日)。このように、ある時期に合憲とされていた規定が少し時間が経過した後、違憲とされることがあります。これは、民法を含め法律の解釈は、憲法、その時代の価値観や社会実態、諸外国の状況などに支えられているからです(もちろん、裁判体の構成が変わることも影響していることがあります)。憲法24条1項は、「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。」と定め、同条2項は「配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。」と定めています。これを受けて,民法739条1項は,「婚姻は,戸籍法(中略)の定めるところにより届け出ることによって,その効力を生ずる。」と定め,いわゆる事実婚主義を排して法律婚主義を採用しています。一方,相続制度については,昭和22年法律第222号による民法の一部改正(以下「昭和22年民法改正」)により,「家」制度を支えてきた家督相続が廃止され、配偶者及び子が相続人となることを基本とする現在の法定相続制度が導入されました。しかし、家族の死亡によって開始する遺産相続に関し、非嫡出子の法定相続分を嫡出子のそれの2分の1とする規定は、現行民法にも引き継がれました。このように、昭和22年には、日本国憲法制定とともに「家」制度を支えてきた家督相続は廃止された一方、相続財産は嫡出の子孫に承継させたいとする国民意識は残ったのでしょう。また、法律婚を正当な婚姻としこれを尊重・保護しようとする反面、法律婚以外の男女関係あるいはその中で生まれた子に対する差別的な国民の意識はまだ残っていたのでしょう。なお、この改正法案の国会審議においては本件規定の憲法14条1項適合性の根拠として,非嫡出子には相続分を認めないなど嫡出子と嫡出でない子の相続の取扱いに差異を設けていた当時の諸外国の立法例の存在が繰り返し挙げられていたといいます。このように、諸外国の立法例が民法900条の解釈に影響を与えていたことがわかります。

 

当事務所では,熊本市内だけでなく,近郊の八代,人吉,菊池,阿蘇,天草各方面にお住まいの方のご相談にも対応しています。相談受付ダイヤル(096(288)6686)にお気軽にお電話ください。

投稿者: 今村法律事務所

今村法律事務所 096-288-6686

初回無料相談 法律に関するQ&A 弁護士コラム