2015.07.14更新

ある人に車を無償で貸していたところ、借主がその車で交通事故を起こしてしまった場合、車を貸してしまった車の所有者は責任を負うのでしょうか?このような場合、所有車を貸した人に損害賠償責任を問う根拠として自動車損害賠償法(「自賠法」)3条があります。自賠法3条は、『自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる』としています。自賠法3条の責任主体である「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)とは、自動車の使用についての支配権(運行支配)を有し、かつ、その使用により享受する利益(運行利益)が自己に帰属する者であるとされています。もっとも、自動車事故により人的損害を受けた被害者の保護を図るという自賠法の目的(自賠法1条)に照らせば,運行供用者の運行支配は,必ずしも当該自動車の運行に対する直接的具体的な支配の存在ではなく,社会通念上,すなわち客観的・外形的に見て自動車の運行に対し支配を及ぼすことのできる立場にあり,運行を支配・制御すべき責務があると評価される場合には,その運行支配が肯定されると考えられています。同じように、運行利益についても,必ずしも現実的具体的な利益の享受を意味するものではなく,諸般の事実関係を総合して客観的・外形的に観察して,法律上又は事実上,何らかの形でその者のために運行がなされていると認められると評価される場合には,その運行利益が認められると考えられています。このように、近時の裁判例の考え方として、運行利益についてはあまり重視せず、支配可能性や支配の責務といった要素を取り込んで判断しているようです。車を無償で貸していた例で言えば、現実的な運行利益は貸した人にはないかもしれませんが、客観的外形的な運行利益があるとみとめられれば、このような場合でも自動車の支配可能性や支配の責務があるので、自賠法3条の責任が認められることになるという結論になるのでしょう。なお、自賠法3条に基づいて物損についての損害賠償はできないので、注意が必要です。

 

 

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投稿者: 今村法律事務所

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