2015.06.18更新

株式会社の取締役会が取締役会の決議を経ずに「多額の借財」をした場合,当該取引(借財)はどのようになるのでしょうか。これについて判例は,以下のように判断しています。―以下引用―【株式会社の一定業務執行に関する内部的意思決定をする権限が取締役会に属する場合には、代表取締役は、取締役会の決議に従つて、株式会社を代表して右業務執行に関する法律行為をすることを要する。しかし、代表取締役は、株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する点にかんがみれば、代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、内部的意思決定を欠くに止まるから、原則として有効であつて、ただ、相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限つて、無効である、と解するのが相当である。(最三昭和40.9.22民集19巻6号1656頁)】
このように,(多額の借財に取締役会の決議が必要な会社において,)株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ずに,多額の借財をした場合には,原則として当該借入自体は有効ですが,取引の相手方(貸付する方)が決議を経ていないことを知り,又は知りえた場合であれば当該借入自体は無効になるというのが判例の考え方です。このような判例の考え方に立てば,融資先から議事録等の資料の交付を受けることで,この悪意・過失がないことの裏付けとなるということになるでしょう。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.17更新

株式会社においては,「多額の借財」は取締役会の権限とされており,「代表取締役に委任することができない」とされています(会社法362条4項2号)。つまり,代表取締役が取締役会にかけずに多額の借財をすることを決定しても無権限で行ったことになります。もっとも,会社法においては,株式会社の機関を自由に設計できます。そこで,株式会社といっても,そもそも取締役会が設置がされていない株式会社もあります。まず,委員会設置会社では,取締役会は「多額の借財」について執行役への委任することが可能です(会社法416条4項)。また,取締役設置会社においても,特別取締役による決議が許容されています(会社法373条)。
以上のとおり,現行会社法のもとでは様々の形態の機関をもった株式会社が存在するため,株式会社に多額の貸し付けをする側(金融機関)も貸付先の株式会社の機関がどのようになっているかを商業登記や会社定款によって確認する必要があります。そして,会社の機関がどのようになっているのか等に応じて無権限での借入でないことを裏付ける資料の提出(取締役会議事録,特別取締役会議事録等)を求めることになります。

 

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