2015.07.15更新

自動車の盗難被害に遭い、その犯人が盗難車で交通事故を起こした場合、車両の所有者は、交通事故の被害者に対して損害賠償責任を負うことがあるのでしょうか?自賠法3条の責任を問うための要件である「運行供用者」について、客観的・外形的に見て自動車の運行に対し支配して運行を支配・制御すべき責務があると評価される場合には,運行支配あるとされます。また、運行利益についても,諸般の事実関係を総合して客観的・外形的に観察して,法律上又は事実上,何らかの形でその者のために運行がなされていると評価される場合には,その運行利益が認められると判断されます。このように、盗難車の所有者の運行支配ないし運行利益は,仮に,泥棒運転のように運転者が主観的に返還意思を有していなかったとしても,そのことから直ちに運行支配ないし運行利益が否定されるものではないのです。このように、いわゆる泥棒運転の場合においても,窃取されたということから直ちに所有者の運行供用者責任が否定されることになるものではないので注意が必要です。つまり、盗難の場合においてさえ,車両所有者の管理形態や管理状況が問われることとなります。まさに車両所有者にとってみれば、踏んだり蹴ったりの結果さえありえるのです。

 

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.07.14更新

ある人に車を無償で貸していたところ、借主がその車で交通事故を起こしてしまった場合、車を貸してしまった車の所有者は責任を負うのでしょうか?このような場合、所有車を貸した人に損害賠償責任を問う根拠として自動車損害賠償法(「自賠法」)3条があります。自賠法3条は、『自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる』としています。自賠法3条の責任主体である「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)とは、自動車の使用についての支配権(運行支配)を有し、かつ、その使用により享受する利益(運行利益)が自己に帰属する者であるとされています。もっとも、自動車事故により人的損害を受けた被害者の保護を図るという自賠法の目的(自賠法1条)に照らせば,運行供用者の運行支配は,必ずしも当該自動車の運行に対する直接的具体的な支配の存在ではなく,社会通念上,すなわち客観的・外形的に見て自動車の運行に対し支配を及ぼすことのできる立場にあり,運行を支配・制御すべき責務があると評価される場合には,その運行支配が肯定されると考えられています。同じように、運行利益についても,必ずしも現実的具体的な利益の享受を意味するものではなく,諸般の事実関係を総合して客観的・外形的に観察して,法律上又は事実上,何らかの形でその者のために運行がなされていると認められると評価される場合には,その運行利益が認められると考えられています。このように、近時の裁判例の考え方として、運行利益についてはあまり重視せず、支配可能性や支配の責務といった要素を取り込んで判断しているようです。車を無償で貸していた例で言えば、現実的な運行利益は貸した人にはないかもしれませんが、客観的外形的な運行利益があるとみとめられれば、このような場合でも自動車の支配可能性や支配の責務があるので、自賠法3条の責任が認められることになるという結論になるのでしょう。なお、自賠法3条に基づいて物損についての損害賠償はできないので、注意が必要です。

 

 

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2015.07.13更新

他人の自動車に乗っていたところ、その自動車が事故を起こして同乗者が交通事故の被害者になった場合、被害者は好意同乗者として損害額が減額される場合があります。「好意同乗」とは、好意により無償で他人を自動車に同乗させることをいいます。かつて、被害者が好意同乗者であるという理由だけで損害額を減額するような裁判例もありました。しかし、現在の実務は、好意同乗者として減額する法的な根拠は過失相殺や公平の原則、信義則等を理由とします。そのため、好意同乗者として過失相殺等がなされるのは,同乗者自身が事故発生の危険が増大するような状況を作出させたり(例えば、過速度運転や蛇行運転を煽る等の行為をした場合),交通事故発生の危険が極めて高い客観的事実が存することを知りながらあえて同乗した場合(例えば、運転者が酒気を帯びていることを知っていて同乗した場合)など,交通事故の発生について同乗者に非難されるべき事情があることが必要な場合に限って減額するというのが現在の実務です。

 

 

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