2015.07.08更新

死亡退職金とは、労働者である被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与を受け取る場合のその退職手当金等をいいます。例えば、規定上の受給者がいない場合、規定上は受給者でない相続人は、これらの死亡退職金を相続することはできないのでしょうか?死亡退職金の受給権は相続財産に属するのでしょうか?この点、判例は、「職員の退職手当に関する規程は職員に関する死亡退職金の支給、受給権者の範囲及び順位を定めているのであるが、右規程によると、死亡退職金の支給を受ける者の第1順位は内縁の配偶者を含む配偶者であつて、配偶者があるときは子は全く支給を受けないこと、直系血族間でも親等の近い父母が孫より先順位となり、嫡出子と非嫡出子が平等に扱われ、父母や養父母については養方が実方に優先すること、死亡した者の収入によつて生計を維持していたか否かにより順位に差異を生ずることなど、受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なつた定め方がされている点を重視し、職員の退職手当に関する規程は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得するものと解するのが相当であり、そうすると、右死亡退職金の受給権は相続財産に属さず、受給権者である遺族が存在しない場合に相続財産として他の相続人による相続の対象となるものではない」と判断しました(最判昭55・11・27民集34-6-815)。このように、死亡退職金が遺族の生活保障を目的としているのであれば、相続財産には属さないという結論になるでしょう。

 

当事務所では,熊本市内だけでなく,近郊の八代,人吉,菊池,阿蘇,天草各方面にお住まいの方のご相談にも対応しています。相談受付ダイヤル(096(288)6686)にお気軽にお電話ください。

投稿者: 今村法律事務所

2015.07.07更新

養老保険とは、生命保険のうち、一定の保障期間を定めたもので、満期時に死亡保険金と同額の満期保険金が支払われるものです。養老保険は、満期時に必ず保険金を支払う必要があることから、保険料の額には、保障に関する部分の他に、満期保険金支払いのための積立て(貯蓄)部分が反映されるので、保険料はかなり割高になります。
この養老保険の保険金受取人を「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定したときの養老保険契約の性質や保険金請求権の帰属が問題となった事件があります(最判昭40・2・2民集19-1-1)。これについて、判例は,以下のような判断をしました。-以下引用-養老保険契約において保険金受取人を保険期間満了の場合は被保険者、被保険者死亡の場合は相続人と指定したときは、保険契約者は被保険者死亡の場合保険金請求権を遺産として相続の対象とする旨の意思表示をなしたものであり、商法675条1項但書の「別段ノ意思ヲ表示シタ」場合にあたると解すべきであり、原判決引用の昭和一三年一二月一四日の大審院判例の見解は改められるべきものであつて、原判決には判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違背があると主張するものであるけれども、本件養老保険契約において保険金受取人を単に「被保険者またはその死亡の場合はその相続人」と約定し、被保険者死亡の場合の受取人を特定人の氏名を挙げることなく抽象的に指定している場合でも、保険契約者の意思を合理的に推測して、保険事故発生の時において被指定者を特定し得る以上、右の如き指定も有効であり、特段の事情のないかぎり、右指定は、被保険者死亡の時における、すなわち保険金請求権発生当時の相続人たるべき者個人を受取人として特に指定したいわゆる他人のための保険契約と解するのが相当であつて、前記大審院判例の見解は、いまなお、改める要を見ない、そして右の如く保険金受取人としてその請求権発生当時の相続人たるべき個人を特に指定した場合には、右請求権は、保険契約の効力発生と同時に右相続人の固有財産となり、被保険者(兼保険契約者)の遺産より離脱しているものといわねばならない。然らば、他に特段の事情の認められない本件において、右と同様の見解の下に、本件保険請求権が右相続人の固有財産に属し、その相続財産に属するものではない旨判示した原判決の判断は、正当としてこれを肯認し得る。-引用ここまで
つまり、判例は、養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のないかぎり、右契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当である。そのような「他人のための保険契約」と解することが可能である以上、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、右相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱していると判断しているのです。このように、ある人が亡くなったときに、それをきっかけとして相続人に被相続人の財産が移転した場合、その財産は遺産かそれとも固有財産かをめぐり争いになるのです。

 

当事務所では,熊本市内だけでなく,近郊の八代,人吉,菊池,阿蘇,天草各方面にお住まいの方のご相談にも対応しています。相談受付ダイヤル(096(288)6686)にお気軽にお電話ください。

投稿者: 今村法律事務所

2015.07.06更新

亡くなられた方の遺骨の所有権は誰に帰属するのでしょうか?そもそも、遺骨は所有権の目的になるのでしょうか?古い判例は、「生存者から分離した身体の一部と同様に、遺骨も有体物として所有権の目的となることができ、その所有権は相続人に属する。(大判大10・7・25民録27-1408)」として、遺骨も所有権の目的となると判断しました。その後の判例では「遺骸の所有者は、他の財貨の所有者と異なり、その所有権を放棄することができない(大判昭2・5・27民集6-307)」として、遺骸の所有権は自由に放棄できるような性質の所有権ではないとしました。その後、時を経て平成の時代になり、最高裁判例で、「遺骨は慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属する。」と変更されました。このように、現在において,遺骨は、祭祀の主宰者の所有に属すると解されています。なお、祭祀の主宰者が継承するものとしては、民法上、系譜や祭具、墳墓の所有権などがあげられています(民法897条)。

 

当事務所では,熊本市内だけでなく,近郊の八代,人吉,菊池,阿蘇,天草各方面にお住まいの方のご相談にも対応しています。相談受付ダイヤル(096(288)6686)にお気軽にお電話ください。

投稿者: 今村法律事務所

今村法律事務所 096-288-6686

初回無料相談 法律に関するQ&A 弁護士コラム