2015.12.11更新

平成27年9月11日、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部を改正する法律が成立しました。この改正法で労働者派遣事業はどうかわるのでしょうか?改正法は、専門26業務の区分を撤廃し、派遣労働者を無期雇用であるか有期雇用であるかによって区分した上で、①無期雇用の派遣労働者については、派遣期間の制限を撤廃し、②有期雇用の派遣労働者については、派遣労働者単位で派遣期間の上限を3年と定めながら、派遣先・派遣元事業者に派遣労働者を別のものに入れ替えさえすれば派遣労働を永続することを可能とするものです。このような労働者派遣法の改正により、労働者の雇用と生活を不安定にする危険が高まっています。まず、「無期雇用の派遣労働者」というのは派遣元との雇用契約が無期の契約のことです。「無期雇用の派遣労働者」というと短期間の更新を繰り返す有期雇用と比べて雇用が安定していると考えるかもしれません。しかし、そもそも、派遣という働き方は、派遣元と派遣先の労働者派遣契約がなくなれば派遣先での仕事はなくなるというのが裁判所のスタンスです。つまり、無期契約の派遣労働者でも、派遣元と派遣先の契約がなくなれば、それまでの賃金と雇用を確保することはできないのです。リーマンショックなどでひとたび景気が悪化すれば、派遣先は派遣元との契約を即座に解除し、派遣労働者は切り捨てられてきました。そして、無期契約の派遣労働者も例外ではありませんでした。
改正法における無期雇用の派遣労働者については、直接雇用労働者との具体的な均等確保策がない中で派遣期間の制限を撤廃すれば、直接雇用労働者がより低い待遇の派遣労働者に置き換えられることになります。その結果、派遣労働者が臨時的、一時的ではなくなり、派遣労働者の常用代替が促進されます。また、有期雇用の派遣労働者についても、3年ごとに派遣労働者を別の者に入れ替えれば派遣労働者を使い続けることができるようになり、派遣労働が固定化され、派遣労働の常用が促進されます。このように、これまでは、「派遣は臨時的・一時的な働き方である」という原則が維持されてきたのですが、改正法により、派遣期間は実質的には撤廃されることになり、派遣という働き方が一般的な就労形態になって、派遣労働者のみならず労働者全体の雇用と生活が不安定になる可能性が高まったのです。

 

 

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投稿者: 今村法律事務所

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