2015.10.23更新

競馬では、レースごとに予想を立てて馬券を購入します。では、予想が当たり払戻金を受領した場合、払戻金については所得になるのでしょうか?当たり馬券の払戻金は所得税法上の一時所得になると考えられています。競馬には賭博性があり、馬券が当たるか外れるかは偶然に左右され射幸性を有するのが特徴です。とすると、払戻金は一時所得、すなわち「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」(所得税法34条1項)ということになります。では、競馬予想ソフトと情報配信サービスを活用して、一定の条件設定と計算式により大量に馬券を購入した場合はどうなるのでしょうか?例えば、競馬予想ソフトと情報配信サービスを活用して、一日当たり数百万円から数千万円、一年あたり数億円前後の馬券を購入していたような場合です。このように特殊な購入を継続した場合に、通常の馬券の払戻金と同様に一時所得として取り扱うべきか、それともどの所得区分にも該当しない場合として雑所得として取り扱うべきかが問題となりました。さらに、外れ馬券を必要経費とすべきかも問題となり、それにより所得金額及び所得税額が大きく左右されることになります。これについてのリーディングケースとして、馬券の払戻金による所得について申告義務があることを認識していたにもかかわらず、3年間で1億5000万円あまりの所得を申告しなかったとして、所得税法違反に問われていた被告人である元会社員についての刑事裁判があります(平成25年5月23日大阪地方裁判所)。判決では、被告人には無申告についての正当な理由は認められず、所得税法241条の単純無申告罪が成立し、有罪(懲役2月執行猶予2年)とされました。ところが、当たり馬券の払戻金に係る所得については、一時所得ではなく雑所得に分類されるとして、当たり馬券を含めた購入金額全体が必要経費として雑所得から控除されると認定されました。その理由としては、本件のような馬券購入行為は所得源泉性(恒常的に所得を生じさせるということ)が認められるからということでした。この裁判例によると所得源泉性が認められると雑所得となり、認められないと一時所得になるということになります。なお、この判決には検察官が控訴しましたが、高裁でも雑所得として扱われました(ただし、その理由は若干異なります)。

 

 

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投稿者: 今村法律事務所

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